2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

リッツくらい大きなダイアモンド

「そんなのぜんぜんお話にもならないさ。だって僕の父は、リッツ・カールトン・ホテルよりも大きなダイアモンドを持っているんだもの」 『リッツくらい大きなダイアモンド』は、フィッツジェラルドの小説としてはちょっとだけ珍しい。フィッツジェラルドの大…

本を投げることすらできやしない――コズミック・ゼロ

人間が、たくさんいる。 シンプルすぎて斬新ですらある書き出し。元日午後零時に初詣客が多数消失、それとともに警視庁などが謎の集団に占拠される。それは『日本絶滅計画』の始まりだった――。消えた家族を探す婚約者ペアとその家族を中心に、SISとかCIAとか…

リソースの割り振り方――彩紋家事件

『コズミック』を遠い昔に読んで異様な衝撃を受けた覚えはあるのだけれど、『カーニバル』や『ジョーカー』は未読である。なぜか今回は『彩文家事件』と『コズミック・ゼロ』を読んだ。 読んだ感想を一言でまとめると、「『コズミック』の面白さって大量に人…

構造物が生物の生殺与奪を握る――ウイルス・プラネット

『ウイルス・プラネット』を読んだ。小さな頃からこういう学術畑の人が書いた一般書が好きで、よく図書館で借りていたのを思い出した。ウイルスというと身構えてしまうけれど、我々の生活から身体の仕組みに至るまでその存在は欠かせない。 生物畑ではない人…

くずにっき

カフェインと糖質の繰り返しでどんよりとした覚醒とじっとりとした眠りに取り込まれている。生活を立て直せない。

歪んでいるのにクリティカルな関係――めしにしましょう

深読みしすぎと揶揄されてもいい。『めしにしましょう』は非常に屈折した百合漫画である。 ちょっと違うな。青梅川おめがと广大脳子は両方ともアイデンティティの核に女性である部分があまりない。特に作者の投影である青梅川さんには。だから、百合ではない…

引き寄せる力と離れる力――みずは無間(途中?)

『みずは無間』について書くのは難しい。なぜなら、私はみずはと主人公の両者の性質を併せ持っているから、あまり客観視して書けないのだ。修行が足りない。無人宇宙探査機のAI、雨野透には、実在の人間の人格が投射されている。面倒くさくて重たい彼女・み…

くずにっき

小説を書いているが、長編が書けない。三題噺みたいなことしかできないつくづく文章がうまくない。書くという行為自体が好きではないのかもしれないが、それを取り除いたら私にはやることがなくなってしまうので認めないでおこう。

何もなく通り過ぎていくという悲劇――ハラサキ

「ひなちゃんのしたこと、あたしは許せそうにない」 幼少期の記憶を覚えていない女性が婚約を期に故郷に帰る。電車の中で気を失って目覚めると、駅の外には女性が倒れていた――。あらすじの通り、幼少期の記憶がない女性とその婚約者の男性の目線で彼女の過去…

エロ界の水戸黄門――どす恋ジゴロ

前回『任侠沈没』を読んで、こりゃあ勢いのある漫画を読まなければ、というか勢いしかない漫画を読まなければ!という謎の思いに誘われ、平松伸二の漫画をいろいろ漁っていた。 みんなだいすき平松伸二。『ブラック・エンジェルズ』の思い出を聞くと、たいて…

(勢い)(勢い)(勢い)――任侠沈没

某ツイッタラーさんが勧めていたのでちょこっと覗いてみたら……あっという間に最後まで読み切ってしまった。侠気あふれるヤクザ、大紋寺龍伍。組を思って組長の息子を斬ったがゆえ恨まれ、妻と子を殺されてしまう。仇討ちのため、組長のいる東京に向かおうと…

プラネット・ウィズの雑多な感想

『プラネット・ウィズ』を見た。何というか、『テニスの王子様』とコロコロの販促漫画(ベイブレードとかミニ四駆とか)をあわせたみたいなバカアニメで面白かった。面白かったところ、気になったところをメモしておく。以下ネタバレ。

小さなスケッチで世界を満たす――メルカトル

救済院の寮母たちは、子どもたちに触らせたくないものにわざと気味の悪い名前をつける。応接室にある椅子のことも「ひきがえる」と呼んだ。詰めもので膨らませた布団とひしゃげた短かい脚のシルエットがひきがえるにそっくりだったからだ。それらの椅子は、…

うつにっき

今日は寝て起きてを繰り返していた。ちょっとしたきっかけですぐに機嫌が悪くなり、ぐずっているうちに人生が終わる。なんと不毛な人間なのだ。

みんなで突っ込もう「性格悪い!」――火の中の竜 ネットコンサルタント「さらまんどら」の炎上事件簿

ネット炎上、毎日してますよね~(小林製薬) インターネットの片隅で、毎日誰かがどこかでスターになって燃え尽きていく。むしろこれだけ毎日燃えているのなら誰も注目しないんじゃないか……なんて思ったりするけれど、ひとときの怒りを娯楽としたくてみなク…

雪の断章

『雪の断章』は孤児を描いた話であるけれど、それ以上にヒールをきちんと描写した物語である。孤児をすくい上げる王子の影はむしろ薄く、『あしながおじさん』とか『キャンディ♥キャンディ』を唾棄してきた人にこそ読んでほしい。……というところで感想を終わ…

信じるものは救われない――彼女がエスパーだったころ

宮内悠介は、考えすぎた人の行き着くエモーションを書くのがうまいと思う。自分の問題を自分の思考で解決しようとした結果、なんだか突拍子もなかったり、常人では考えつかないような結末に至る。本人が自分自身で進んだ結末だからこそ、始末に終えないほど…

跳躍する思考は消えて――言壺

神林長平の『言壺』を始めて読んだ。円城塔の『文字渦』とちょっと比較してみたかったというのもある。でも、扱っているテーマがそんなに似ていないので、これ単体で感想をまとめておいた方がいいように感じた。もしかしたら後で比較するかもしれない。『言…

鬱ごはん

『鬱ごはん』を久しぶりに読む。ご飯を不味そうに食べている漫画だけれど、この不味そうな思考も含めて主人公は楽しんでいるのだろうなあ、なんて考えるようになった。ご飯を食べることを他人とのコミュニケーションに使う場合もあるけれど、自分一人ならそ…

ニルヤの島(その2)

昨日は『ニルヤの島』について文章を書いたのだけれど、自分が好きなポイントや面白かった部分についての記述がちょっと足りないなあと後で思い直した。ので、書く。『ニルヤの島』の面白さは、登場人物の抱える空虚や茫漠をそのまま描いているところだ。人…

ニルヤの島

なるべく好きなものの話だけ書いていたいものだけれど、苦手なものや嫌いなものの感想のほうが筆が進んでしまう。性格が悪いのだと思う。今日は好きなものについて書こう。というわけで『ニルヤの島』を取り上げる。見た目も性格もなかなか濃い柴田勝家(作…

ジムが怖い

毎日自重筋トレをしている。周囲にジムがないからというのもあるけれど、ジムに漂う選民感に気後れしてしまうからだ。 自分が勝手に感じているだけであるのはわかっているのだが、怖い。筋肉あっていかついから余計に怖い。ひどい言い草だ。 そもそも自分が…

大人の忖度で心を潰すな――『恋は雨上がりのように』

『かわたれの街』という勝田文の漫画がある。女子高生がダメ男に恋をする話なのだけれど、私はそれの第一話にあたる冬編が好きだ。 ダメ男に女子高生が告白する。ダメ男は、奥さんに振られても振られてもストーキングをし続けるようなダメな自分に恋などして…

虚ろのひびふたたび

人生が復帰できなくて困っている。お金をつかうことだけは一人前なのに。今日もまた買い物をしてしまった。 お金をつかうことで一瞬だけ虚ろから逃れられたような気持ちになる。ただの依存症だ。