構造物が生物の生殺与奪を握る――ウイルス・プラネット

『ウイルス・プラネット』を読んだ。小さな頃からこういう学術畑の人が書いた一般書が好きで、よく図書館で借りていたのを思い出した。

ウイルスというと身構えてしまうけれど、我々の生活から身体の仕組みに至るまでその存在は欠かせない。
生物畑ではない人からすると驚くかもしれないが、ウイルスは細胞ではない。wikipedia細胞の項目を引くと「全ての生物が持つ、微小な部屋状の下部構造のこと」と書いてあるくらいなので、ウイルスは「非生物」と呼ばれることすらある(遺伝情報は持っているので「非細胞性生物」と呼ばれていることもある)。本当に小さな、わずかな遺伝情報しか持っていない、細胞すらない構造体。それが、地球の生物すべてを支配しうるということ。ドキドキしませんか。このとを知っていても、実際にウイルスが生物を変容させてきた歴史、卑近なケースデータで提示されると、さまざまな想像を働かせたくなる。
この本、翻訳としてはかなり文章が読みやすいというのもプラスポイントだ。翻訳調にならないようかなり気を遣われている部分が随所に見られる。最初から最後まで一気読みできるくらい。面白いですよ。