エロ界の水戸黄門――どす恋ジゴロ

前回『任侠沈没』を読んで、こりゃあ勢いのある漫画を読まなければ、というか勢いしかない漫画を読まなければ!という謎の思いに誘われ、平松伸二の漫画をいろいろ漁っていた。
みんなだいすき平松伸二。『ブラック・エンジェルズ』の思い出を聞くと、たいてい「ラーメン屋で読んだ」「床屋で読んだ」という答えが返ってきたりする。私はつくばの巨大チキンカツで有名な夢屋で読んだ覚えがある。
勢いしかない漫画としては『ザ・松田』とかを読めばいいのだけれど、ちょっと変化球にしたくて、『どす恋ジゴロ』と、続編の『嗚呼どす恋ジゴロ』を読んだ。大学生の頃に1話だけ読んだことがあったので、ちゃんと読み返したいという気持ちが湧いたのだ。

昼は名勝負で客を沸かせる関脇、夜は女性を沸かせる名ジゴロの恋吹雪。字面にしてもよくわかんないですねこれ。まあ、不幸な女性を一夜の契りによって幸せにする「あげちん」の話です。
平伸特有の勢いというか「こまけえことはいいんだよ」分がしっかりしている。コメディと人情を混ぜつつ、『ブラック・エンジェルズ』ほど暗いところや過去回想もなく、1話1話をさっぱりと読める。オチがハッピーエンドになるのが決まっているのは水戸黄門とかサザエさんっぽい。エロ界の水戸黄門2強である(もう一つは『男!日本海』)。
また平伸にしては珍しく、個人が持つ能力のレベルを都合で捻じ曲げたりしないところもいい。まあ、あれだけ勝ちまくっている恋吹雪がどうやって関脇という立場を守り続けているのかはちょっと気になるけれどね。

私はエロがあまり好きではないのだけれど、こういう「少しズレたエロ」を扱う話は割と面白いと思う。多分、エロに含まれる欲望に対して設定が緩衝材となってくれるからなのだろう。