鬱ごはん

『鬱ごはん』を久しぶりに読む。ご飯を不味そうに食べている漫画だけれど、この不味そうな思考も含めて主人公は楽しんでいるのだろうなあ、なんて考えるようになった。ご飯を食べることを他人とのコミュニケーションに使う場合もあるけれど、自分一人ならそのリソースを食べ物や自分自身に振り分けることになる。それって、結構贅沢なことだと思う。

トイレに賞味期限切れの缶詰を捨てていく話が一番強い。グルメ漫画で「食物を廃棄する行為」をテーマにすることはほぼない。『美味しんぼ』みたいな社会問題の文脈で廃棄が語られることはあるかもしれないけれど、個人の生活の中で起こるそれはなかなか取り上げられない。でも、これだって自分と食べ物の付き合い方のひとつだ。トイレの臭いと交じる食べ物のニオイに吐き気をもよおしながら、目を合わせずに捨てていく。その過程に向き合うのは、孤独であることに含まれた大きなイベントだし、食べることの一つに含んだっていいだろう。そこを分け隔てしないところが施川ユウキのすごいところかもしれない。