王様達のヴァイキング16

発売されていたので早速読んだ。

今回の事件の敵はめちゃくちゃハッキングが強いわけでもなく、ただただ「しょぼい」からこそ強い人間である。これは事件のスケールが小さくてつまんないっていう話ではない。むしろそういう人と是枝くんが戦えるようになったというのは大きなポイントだ。つまりそれは、彼がハッキング以外の武器を手に入れたということだから。
前の是枝くんなら勝てなかった、というより戦い方すらわからなかった相手だろう。でも、世の中の悪意の殆どは巨悪ではなくて、今回の敵みたいなちっぽけでねちっこい「人間」なのだ。ピースメーカーを作るなら、しょぼくて厄介な「人間」たちを相手にする機会が確実にやってくる。最大にデカイ事件をやったあとにこれを出してくるのはなかなか心憎い。
ただ、彼の根っこにある「人間がわからない」という部分があやふやにされていき、特にきっかけもないまま「人間がわかった」にシフトしているような気がする。穿った見方かもしれないけれど。是枝くんが人間を知っていくごとに、だんだん成長していくように書こうとしているのはわかるのだ。でも、成長ってそういうことでいいのかなあと思ったりする。私の根幹に「人間はわからん」ってのが巣食っていて、ずっと仲間だと思っていた是枝くんの足を引っ張ろうとしているだけなのかもしれないけどね。