苦手な対話を克服するための一考察

対面での対話が苦手だ。

相手の話を聞いている間、それに対して意見を求められるのがわかっているから緊張して固まってしまう。もともと音声から内容を聞くのが苦手で、一度頭のなかで文字にしてからメモとして出力してはじめて内容が理解できる。でも、通常の会話でメモを取るなんてできないし、聞こえた音を2,3秒間頭に待機させて認識する。その間、もちろん相手の話は進んでいる。切れ切れの単語(単語にすらならないこともある)から予測した内容について、頭の中で文字としてまとめそれを読む。予測の2,3割は大抵間違っているし、テンポもめちゃくちゃ遅い。そこにあがり症が加わって、もうしっちゃかめっちゃかである。

今日、対照的な二つのお店に行った。一つはメガネ屋で、セールストークがめちゃくちゃすらすらーっと出てくる。でも私には内容が聞き取れないので、相手がこちらの聞き取れなさを悟ってゆっくりと伝えようとしてくる。そこに対して更に緊張する。「ちょっと考えさせてもらっていいですか」と一度追い払っても、私の挙動不審さに別の店員がやって来る(この挙動不審さも原因の一つだな)。なんかあんまり吟味しないまま、ただその場から逃げ出すために眼鏡を即買いしてしまった。安い買い物でもないのに、なんか損した気分だ。

もう一つの店はファーストフード店。レジのおねえちゃん(多分高校生)がド緊張していて、横にいる先輩に耳打ちされた言葉をそのまま繰り返していた。でもかみまくる。レジも打ち間違えまくる。「……ごめんなさい、もう一度ご注文を……」「これとこれです(メニューを指差す)」「あ、はい……(レジ打ち込み中)……えーと……」
注文を終え、待っている間。ふと今の注文が楽だったことに気づいた。メガネ屋での会話はあれだけ頭をフル回転させたのに一切覚えていない。だけど、今注文したときのお姉ちゃんの言葉遣いとかはかなり細かく覚えているのだ。

こちらが能動的に働きかける割合が少なかったからだろうか。でもそれだけじゃないと思う。相手が「こちらのことを一切気にしていない」ということがわかっていたから、安心して(ある意味機械に対応するように)注文できたんじゃないのか。
何に私が驚いているかというと、対話苦手意識が自意識過剰によって発生していた可能性が大きいということなのだ。他者の性質は関係なくて、こちらが相手をどれだけ気にしているかが対話の難易度に大いに影響していたのではないか。
相手がこちらのことを気遣ってくれている状況(メガネ屋)では緊張し、相手がこちらに気を取られていない状況(ファーストフード店)では緊張しない。こちらの言葉がうまく伝わっているかどうかは関係ない(現にファーストフード店では内容を何回か聞き返されているしね)。

で、現実世界でボスや同輩と話をするときにこの気づきをどう活かすか。対話は相手の話を聞かないと成立しない。内容を理解しないとうまくいかない。私にとって必要なタイムラグは、短くすることができない。このタイムラグを気にすると、ますます会話の難易度が上がるし、その緊張がタイムラグをさらに長くする。だから、タイムラグを「気にしない」訓練をするのが一番なんじゃないかなー(相手の話を理解するための時間を削ろうとしないこと)。しかしその訓練が難しいんですよね、ということでまだまだ思考をする必要があるのだった。