コミュ力ってなんですか

コミュニケーション能力(以下コミュ力)が必要だ、という文言はどんな職種紹介にも書いてある。営業、接客はもとより、経理や人事といった事務職、技能職や研究職、果ては工場や工事などの作業職まで。なんというか、「生きていること」と同じレベルの必須項目になっている気がする(余談だが、生きていることは働くための必要条件ではないかもしれない。でも「生きていること」の定義が難しいのでちょっとここでは置いておこう)。
仕事だけではない。学校や友人関係(ママ友とかも含む)、家族関係(親、配偶者、親戚、子ども)においても、コミュ力の大切さが説かれる。むしろコミュ力の要らない場所を教えてほしい。コミュ力がなければ人生のすべてが上手く行かないくらいの勢いだ。

コミュ力という言葉が内包する意味はあまりにも多い。ヒアリング能力や相手の言葉をまとめる能力、自分から積極的に言葉を発信していく能力、はたまた人の発言や心理を予測して話し方や内容を変える「空気を読む」能力、雑談をとにかく途切れさせない能力……。それぞれの仕事や人間関係にとって必要なのは、これらの側面のうちの一つないし二つである。それを具体的に言えばいいものを、コミュ力なんて言葉で包括してしまい、「うちの求めるコミュ力が何なのかは自分で考えてください」という理不尽なクイズを出すのはあまりに不毛だ。

コミュ力がないと思っている人の大半は、「コミュ力と呼ばれているうちのどれかが苦手」な場合が多い。また、全部においてなんとなく不得意な場合であったって、コミュ力として包括されている大抵の能力は不必要であったり、ツールや時間を用いれば補完が可能だったりする。この辺をどううまく対処するか考えるには、コミュ力なんて雑な言葉を使わず、「何をする目的でどういう能力が必要か」を切り分けた方が便利だし、心理的にも楽になれるんじゃないか。