逃げろ!というエゴ ーー子グマ!子グマ!

こんな中途半端な記事を書いてから、ずっとスピッツについて考えている。全体としての話はいつか書くとして、今の思いつきを軽くまとめておきます。

『子グマ!子グマ!』という歌がある。アルバム『醒めない』の3曲目に収録されている。私はこのアルバムの1~5曲目の流れが好きなのだが、『子グマ!子グマ!』はその中でもちょっと流れを遊ばせるようなファニーな水たまりとなっている。『花鳥風月』の『愛のしるし』みたい。
で、この曲には以下のような歌詞がある。

幸せになってな ただ幸せになってな
あの日の涙が ネタになるくらいに
間違ったっていいのにほら こだわりが過ぎて
君がコケないように 僕は祈るのだ

子グマ!子グマ!荒野の子グマ
おいでおいでするやつ 構わず走れ
子グマ!子グマ!逃げろよ子グマ
暗闇抜けて もう少しだ

いっぱい並べた 夢・希望・諸々 バイバイ僕の分身

この曲を聞いているうちに脳裏に浮かんできたのは『森のくまさん』である*1。まあ「クマ」繋がりであるだけといえばその通りだ。でもそれだけではない。『森のくまさん』には不思議な部分があり、『子グマ!子グマ!』は、その謎と共鳴するような気がしたのだ。

くまさんの いうことにゃ
おじょうさん おにげなさい

なぜ逃げられる側のくまさんが「逃げろ」と言ってくるのだろうか。

実際の意味は想像するしかないが、もしこれが大切な「おじょうさん」を自分から追いやる言葉だとしたらどうだろう。それでも「白いイヤリング」を届けてしまう。もしこの歌が終わったら、二人は本当にお別れするのだ。もちろんこれはただの妄想ではあるけれど、そうだとしたらとてもくまさんは勝手だし、その勝手さにしめつけられる。くまさんはどれだけその子のことが好きなのだろう。
『子グマ!子グマ!』では熊の役割が逆ではあるけれど、同じような捉え方をすることができる。大切な子グマを追いやり、「逃げろ」とはやす。その後ろ姿を眺めながら「バイバイ僕の分身」とつぶやく。とても身勝手で、とてもさみしい。

もう一つイメージを追加してみよう。筋肉少女帯『香菜、頭をよくしてあげよう』である。サブカル野郎が女の子を教化する歌である。「いつか終わりが来る」恋を見越し、バカな女の子に映画や本を紹介する。そんなエゴイスティックな恋は、だからこそきらめいている。同じようなきらめきを『子グマ!子グマ!』は持っているような気がしてならない。

……そんな夢をみたのさ、というやつですね。
しかし『醒めない』、構成がめちゃくちゃかっこいいなあ……。『ガラクタ』~『ブチ』の流れもいい。

*1:スピッツ大学の情報では「くまの子ジャッキー」が念頭にあるらしいし、実際そう思うとそう聞こえてくる。まあ今回は私の牽強付会ということでお読みください