漫画喫茶の扉

漫画喫茶に泊まることが1年に1回くらいある。各個室には鍵のない低い扉がついていて、中でやばいことをされないようにたいてい外から中が覗けるような窓がついている。

この前宿泊したとき、漫画を取りに行って帰ってきたら、どの扉にも毛布が掛けてあることに気づいた。暑い時期だし邪魔なのかなあ、と思いながら部屋に入ってしばらくしたあと、ぼんやり漫画を読んでいるときに思いついた。さっきの毛布は覗き窓を塞ぐためのものだ。

中の人間が寝ていると泥棒や暴漢に狙われるかも、という防犯上の理由でもあるのだろう。でも、どちらかといえば「寝顔を見られると落ち着かない」というのが本当のところなんだろう。なんだか、人間の自意識をのぞくようでちょっといいものを見た気分になった。

と同時に、「お前の寝顔なんか見ねえよ」と思われてしまうかも……という意味のない自意識過剰を発揮した結果、私自身の部屋には毛布を掛けられなかった。本当にしょうもない。