夜よ鼠たちのために

本屋に入るとなにか買わずに出ることができない。たまたま入った小さな街の本屋で購入。品揃えからご近所さんの嗜好が見えるちょっと独特な店だった。「ステキでレトロな店」というテンプレートを押し出している感じがあるのが玉に瑕だけど、また行きたい。

で、連城三紀彦。この短編集は全体的に夜の匂いがして、稲垣潤一とか中森明菜が似合いそうだ。ミスリードがうまくて、「次の展開はこうなるだろう」という予想が当たるステップが繰り返され、「じゃあ最後はこうなるね!読めた!」という奢りをきれいに裏切って来る感じが気持ちいい。描写がかなり丁寧で行き届いている。丁寧すぎて「そこまで書かなくていいのでは……」と心配になるくらい。

あと、主人公が全体的に根暗で自分に自信がないところがよい。というか、ハードボイルドの主人公ってみんな自虐的で、その割に決断力だけはあるもんだから不幸に陥っていくんですよね。それを地でいったような人物ばかりが出てきて、ちょっと笑い出しそうになってしまう。


ドラマティックレイン 稲垣潤一