星座になること

ギリシャ神話には王道パターンがいくつもある。「ゼウスの女癖」とか「ヘラの嫉妬」とか。どれも気になるけど、最近とみに気になるのは「かわいそうに思った神が星座にしてあげました」というパターンである。

ゼウスの子勇者ヘラクレスヘルクレス座)は、誤って自分の子を殺した罪を償うため、12の冒険を行うことになった。そのうちの1つがヒュドラー(うみへび座)の退治である。化け蟹カルキノスは、最初はヘラクレスヒュドラの戦いを見ていた。次第に同じ沼に住んでいる友人であり異父兄弟でもあるヒュドラが形勢不利になったため、飛び出してヘラクレスの足を挟んだ。しかし、ヘラクレスは振り払い踏みつぶした。一部始終を見ていた女神ヘラは、兄弟思いのカルキノスを哀れに思って、天に上げて星にした[1][2]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%AB%E5%BA%A7/

とか。
星座の由来の物語なのだから、最終的にモチーフが星座になってくれないと意味がない。そして、星座になるきっかけは派手な方が物語として語り継がれやすい。結果、「かわいそうな死に方」→「星座にしてあげよう」というテンプレができたのかもしれない。壮大な神話ができてから、人が勝手に星座の話を付け加えたのかもしれない。本当の因果関係はわからない。

だけど、どちらにせよ気になるのは「星座にされること = かわいそうな境遇/死に方を補完するもの」として扱われていることである。あまりに唐突ではないか。「ひき逃げされてかわいそうだから星座にしてあげましょう」って言われたらどうしよう。私は死後の世界をあんまり信じていないのだけどそれは置いといて、そのような選択肢が発生したときのために、メリットやデメリットを考慮しておいてもいいのではないか。

だれかが星座になるとき、メリットを享受できそうな人は以下の3グループが考えられる。

  1. 被害者本人
  2. 被害者の友人・知人(生者)
  3. 被害者を星座にした神様

まず、1の場合。星座になっちゃったらどんな生活が待っているのか。さそり座を恐れるオリオン座とかから考えると、意識はあるっぽい。ある程度の移動はできそうだ。もしかしたら、天国みたいな場所に連れて行かれるのかもしれない。ただ、この辺については想像でしかない。しかもデメリットはたくさんある。空以外の場所は移動できず、プライバシーが一切なくなり、子どもの自由研究やカップルのイチャイチャのネタにされる。
次に、2の場合。千の風になってではないが、いつでも死んだ人に見守られるというのは生者にとっては心強いかもしれない。「あそこの星座、おれの友だちなんすよ」という自慢の種にもなる。
最後に、3の場合。「不幸に陥れた張本人の自己正当化」と、「かわいそうな人を見ちゃった自分の心を慰めるための認知的防衛」の2パターンが考えられる。神様が事件に直接的に関わっているか否かに関係なく、なんとなく「星座にしてあげた」ことで神様の心が落ち着く。なんか、「星座にしてあげた」パターンがやたら多いのは、このあたりに理由があるのではないだろうかと邪推してしまう。

……うーん、自分が星座に何となくなりたくないので、アラ探しばかりしてしまった。今日は眠いのでこのへんで。星座になるメリットを知っている人がいるなら、ぜひ教えてほしい。