グルグル回る

円城塔の『文字渦』を今読んでいる。少しずつしか進まないし、もう3周くらいしないときちんとまとまった感想は書けなさそう。ただ、円城塔作品に共通するテーマのことは少し考えていたので、忘れないうちに書き留めておく。

被創造物と創造者が互いを変更し合う反復構造。無限に続くこと自体が想像世界を作り出すようなダイナミズム。この2つがキーになっている。反復構造と無限連鎖。フラクタル構造のようだ。

私はかねがね「造られたものと造ったものとの関係はどうして非対称なのだろう」なんて言い続けてきた狂人ではある。でも、これを解消するには何が必要なのか、という次の問いについてはうまく進めていなかった(その前の問いすら解決していないけど)。でも、円城塔の物語はそこを飛び越えて、「永遠の反復」によって互いが影響を与え合う。これを読んでいる読者すら創造物に含まれ、観測という行為によって更に作品が変更されることを織り込む。このあたりから演繹的に先程の問いへのアプローチが見つかる、かもしれない。

それはともかく円城塔の本はわからない。というか、わからないということ自体が作品を組み立てている。困ったものだ。だからこそ読み続けてしまう。