変わる自分を許さない――私が大好きな小説家を殺すまで

『私が大好きな小説家を殺すまで』は、作り出す才能を失ってしまった人間と、崇拝する人間の話だ。人は変わる。ものを作り続けることは途方もなくいろいろなものを投げ捨てる必要がある。しかも自分の根っこに関わってくる。もしそれを失ってしまったら、自分自身を失ったことと同義かもしれない。それでも、そのときはやってくる。

崇拝する人間は、才能と彼自身の両方を崇めている。だが、上記で書いたとおり、才能と人間は分離することが出来ない。だから、神様が能力を失ってしまったとき、崇拝の形を変えなければならない。そのときはやってくる。

帯には「衝撃の結末」と書いてあるけれど、この結末は必然だと思う。何かを作ることは自分をすり減らしていくことだし、作り出したもので他者を多かれ少なかれ変容させることだ。そこを直視できていれば、こんな結末にはならなかったかもしれない。だけど、彼らは変わることから目をつむってきた。二人は才能に執着したいがあまり、自分たちの手で橋を焼いてきたのだ。この二人を頑なで愚昧な了見から救い出してくれる何かがあったなら、というifを考えることはできるが意味はない。残酷で不公平だけれど。