BEATLESS

長谷敏司は作品の最後にオープンクエスチョンを投げてくる小説をよく書く。『あなたのための物語』や『父たちの時間』、『震える犬』。すべて物語が一応の完結を迎えるものの、問題の解決が起こったわけではない。なぜなら、それらの問題はすべてこの現実で起こっているもので、我々が今抱えているものだからだ。

BEATLESS』もその一つ。モノとヒトとの関係を問うものである。モノをヒトとして扱うことも、ヒトの上位存在として扱うことも、ましてやヒトの下位存在として扱うことも、すべて欺瞞を含んでいる。モノをモノとして扱い、共に存在し続けること。

AIBOが二度と修理できなくなったとき、店の中でうなだれるペッパーを見たとき。僕らはいつもモノとヒトとの関係を問われている。今はなあなあにしているけれど、きっとこれから『BEATLESS』のような選択を迫られるときがくるだろう。

それをモノ側にも問おうとするところが、『BEATLESS』の面白い部分だ。アニメは見ていないので比較できないのだけれど、この問いについて考えるなら文字で読んだほうが面白いと思う。言葉が一つ一つ楽しいから。