その可能性はすでに考えた

読んでいる本があまりに狭い。もっと面白い本がいっぱいあるんだろうけれど、お金を出そうとすると手が止まってしまう。貧乏性だ。おかげで地方書店の本棚に並ぶようなメジャー本ばかり読んでしまう……(近所に古本屋がないので)。いや、面白いんだけれどね? 今度はアマゾンの中古本とかをまとめて買おう。

で、『その可能性はすでに考えた』。これは珍しく講談社ノベルス発売当初に買ったので、あとでめちゃくちゃ売れていることを知った(講談社ノベルスで文庫化するのってそこまで数が多くない印象。でもハードカバーよりは多いけれどね)。この本、すごいエンターテイメントよりというか、ドリフみたいではないですか? シリアス状況のはずがあまりにも素っ頓狂で、読んでる途中で何度も吹き出してしまった。

奇蹟をどうしても信じたい主人公が、持ち込まれた不思議な事件を奇蹟であると立証するために奔走する、というあらすじ。奔走というか、主人公に複雑な感情を抱く人たちが次々に現れて、ハチャメチャな状況を作り出し、事件に対する説明を勝手に行う。それに対して主人公が理屈をこねて否定する……という流れ。推理が後から後から出てくるので、通販番組の「ちょっと待ってください!」みたいなコミカルさがある。

でも、事件自体に関する情報は一番最初に提示されたもの以上(ほぼ)増えない。だから、推理情報の後出しはない。後期クイーン問題に対する皮肉というか、「登場人物が信じたい真相を真相とすること」が主眼になっている。それができる構造をストーリーの要素によって作り出しているところが非常に賢いなあ、なんて思う。まあ、あそこまで後出し理屈が可能であれば、最後の結末からも「ちょっと待って」無限ループが続いてしまうという別の問題が起こる可能性はあるけれどね。