うどん キツネつきの

ペットボトル入りジャスミン茶を買ったあとにトイレに行くと、まるで何かを入れてきたみたいに見えるのでは……と今日は考えていました(緑茶よりも色が似ている)。

そんなどうでもいいことはともかく、『うどん キツネつきの』。この作者、センス・オブ・ワンダーだけで小説を完成させる天才だと思う。SFには難しい言葉とか細かい説明とかそういうのは必要じゃなくて、きちんと構築された世界とそれを必要十分に説明する言葉、そして張り巡らされた想像力があればいいっていうのを示している。

ほのぼのしたファミリードラマに「すこし不思議」を含んだ短編もいいけれど、何より『おやすみラジオ』がいい。この短編、いらないところがない。登場人物たちがそのときに見たり感じたりしたものが、物語に必要な分だけ無駄なく含まれている。出てくるものひとつひとつに色がついていて、文字をたどるたびに少しずつ明かりが灯るような気持ちになる。そして、とてもさみしい。

こういう文章を書ければいいなあとは思うけれど、そのまままねっこは多分できない。ものごとの感じ方や考え方は僕と結構異なるみたいだから。でも、こんな感じで想像力を文章の細部にまでつなげてみたい。憧れの小説のひとつである。